在宅医療(訪問診療)や訪問看護ステーション選びは、患者様とご家族の「生活の質」と「安心感」を左右する非常に重要な決断です。
良い事業所を選ぶための基準は、大きく分けて**「体制(スペック)」と「相性(人柄・方針)」**の2つの視点があります。
以下に、専門的な視点も含めた選び方のポイントを整理しました。
以下は(Gemini) Aiの答えです。
1. 在宅医(クリニック)の選び方
在宅医療を行うクリニックは、単に「家に来てくれる」だけでなく、**「24時間365日、守ってくれる体制があるか」**が最大の鍵です。
【体制・スペックで見るポイント】
- 「機能強化型」在宅療養支援診療所であるか
- これが最も分かりやすい客観的な基準です。国が定めた厳しい基準(24時間の往診体制、看取りの実績数、医師の人数など)をクリアしたクリニックは**「機能強化型」**と呼ばれます。
- 特に夜間や休日の緊急対応力が高い傾向にあります。
- 距離(16km圏内+α)
- 制度上は半径16km以内なら診療可能ですが、緊急時に**「30分以内で駆けつけられる距離」**にあるクリニックが理想的です。
- 専門性と対応力
- がん末期の緩和ケア、神経難病、重度認知症など、患者様の病状に対する経験が豊富かを確認します。「何でも診ます」という医師も頼もしいですが、特定の処置(点滴、輸血、腹水穿刺など)が自宅で可能かはクリニックの方針によります。
【相性・方針で見るポイント】
- 「対話」ができるか(ここが一番重要です)
- 在宅医療は、病気を治すことだけでなく「どう生きたいか」を支える医療です。
- 一方的に指示するだけでなく、患者様や家族の話を聴き、価値観を尊重してくれる医師かどうかが、長く付き合う上で決定打になります。
- フットワークの軽さと雰囲気
- 高圧的ではなく、相談しやすい雰囲気を持っているか。看護師やケアマネジャーとも良好な関係を築けている医師は、チーム全体の質を高めます。
2. 訪問看護ステーションの選び方
医師は「月に数回」ですが、訪問看護師は「生活の場」に深く入り込み、日常を支える存在です。
【体制・スペックで見るポイント】
- 24時間対応体制(オンコール体制)があるか
- 夜間・休日に体調が急変した際、電話相談や緊急訪問ができる契約が可能か。これは必須条件と言えます。
- スタッフの人数と「機能強化型」
- 看護師が7名以上いるような大規模なステーション(機能強化型訪問看護ステーション)は、スタッフの層が厚く、急な休みや緊急訪問にも対応できる安定感があります。
- 得意分野(緩和ケア、リハビリ、精神科など)
- 「リハビリに力を入れたい」「最期まで家で過ごしたい(緩和ケア)」など、目的に合った強みを持つステーションを選びます。
【相性・人柄で見るポイント】
- 「生活」を見てくれるか
- 医療処置だけでなく、お風呂の入れ方や食事の工夫、介護する家族の精神的ケアまで目配りできる看護師がいるステーションは非常に質が高いです。
- 主治医との連携
- 選んだ在宅医と「顔の見える関係」にあるステーションを選ぶと、情報の共有がスムーズで、トラブルが少なくなります。
3. 「チーム」としての選び方(ここが盲点です)
在宅医療は、医師、看護師、ケアマネジャー、薬剤師などがチームで動きます。個々の能力以上に**「連携のスムーズさ」**が重要です。
- ケアマネジャー(介護支援専門員)に相談する
- ケアマネジャーは地域の評判(「あの先生はフットワークが軽い」「あそこの看護師さんは優しい」など)を最もよく知っています。
- 「父はこういう性格なので、穏やかな先生が良い」「しっかり説明してくれる先生が良い」と具体的に希望を伝えることで、最適なチームをコーディネートしてくれます。
- 入院中の場合:病院の「退院調整看護師」や「相談員(MSW)」
- 退院前に、病院側が推奨する地域のクリニックやステーションを紹介してくれます。
まとめ:失敗しないためのステップ
- 優先順位を決める(例:痛みの緩和を最優先したい、リハビリを頑張りたい、とにかく急変時の対応重視、など)。
- ケアマネジャー(または病院の相談員)に具体的に相談する。 その際、「機能強化型の診療所やステーションが良い」と伝えると、より体制の整った所を探してくれやすくなります。
- 面談を申し込む。 契約前に医師やステーションの管理者と面談(または退院前カンファレンス)を行い、「話しやすさ」や「雰囲気」を肌感覚で確認してください。
在宅医療(訪問診療)、訪問看護、訪問リハビリテーションの導入は、患者様やご家族にとって大きな環境の変化であり、不安も多いものです。
「良い事業所」を選ぶためのポイントや、具体的な導入の流れ、それぞれの役割についてQ&A形式でまとめました。

1. 在宅医療の始め方・基礎知識
Q1. 在宅医療(訪問診療)は、どのような人が受けられますか? A. 基本的に**「通院が困難な方」**が対象です。 足腰が弱って通院が大変な方から、寝たきりの方、がん末期の方、難病の方、認知症の方などが含まれます。「自宅で最期を迎えたい」と希望される方も対象となります。
Q2. どのように申し込めば良いですか? A. 現在の状況によって窓口が異なります。
- 入院中の場合: 病院の「地域連携室」や「医療相談室」の相談員(ソーシャルワーカー)に相談してください。退院後の受け入れ先を探してくれます。
- 自宅にいる場合: すでに担当の「ケアマネジャー」がいれば、その方に相談するのが一番早いです。いない場合は、「地域包括支援センター」または近隣の「在宅療養支援診療所」へ直接相談することも可能です。
Q3. 医師や看護師は何をしてくれますか? A. 病院で行う処置の多くが自宅でも可能です。
- 訪問診療(医師): 定期的な診察、薬の処方、血液検査、点滴、酸素療法、カテーテル管理、疼痛管理(緩和ケア)、看取りなど。
- 訪問看護(看護師): バイタルチェック、清拭・入浴介助、床ずれの処置、医療機器の管理、服薬管理、家族への介護指導、緊急時の対応など。
- 訪問リハビリ(PT/OT/ST): 歩行訓練、関節が固まらないためのマッサージ、飲み込みの訓練(嚥下)、住宅改修のアドバイスなど。
2. 「良い」診療所・事業所の選び方
Q4. 「良い在宅医(診療所)」を選ぶポイントは? A. **「24時間の対応力」と「フットワーク」**が鍵です。
- 機能強化型在宅療養支援診療所か: 24時間365日の連絡・往診体制が厚生労働省の基準で認められている診療所を選びましょう。
- 複数医師体制か: 院長一人だけでなく、チームで診ている診療所の方が、夜間や休日の対応が安定しています。
- 看取り(みとり)の実績: 「自宅で最期まで診る」実績が多い診療所は、急変時の対応や痛みのコントロールに慣れています。
- 連携力: 地域の訪問看護ステーションやケアマネジャーと密に連絡を取っているかどうかも重要です。
Q5. 「良い訪問看護ステーション」はどう選べばいいですか? A. **「看護師の人数」と「専門性」**を確認しましょう。
- スタッフの人数: 小規模すぎると、夜間の緊急呼び出しに対応しきれない場合があります。ある程度の規模(看護師5〜7名以上など)があるステーションは体制が安定しています。
- 得意分野: 「がんの緩和ケアに強い」「精神科に強い」「リハビリスタッフが多い」など、ステーションごとに特色があります。患者様の病状に合った強みを持つ所を選びましょう。
- 相性: 看護師は最も頻繁に家に来る医療者です。「話しやすいか」「家族の不安に寄り添ってくれるか」は非常に重要な要素です。
Q6. 訪問リハビリはどこに頼むべきですか? A. 目的に合わせて選びます。
- 病院・老健からの訪問リハ: 医療機器が必要な場合や、退院直後で医学的管理が重要な場合に強みがあります。
- 訪問看護ステーションからのリハ: 看護師と連携が取りやすく、体調変化に気づきやすいメリットがあります。
- ポイント: 「歩けるようになりたい」「トイレに行きたい」など、具体的な生活の目標(ADL)に即した訓練を提案してくれる療法士が良い療法士です。
3. ケアマネジャー(介護支援専門員)の重要性
Q7. ケアマネジャーの役割と選び方は? A. ケアマネジャーは在宅医療チームの**「指揮者」**です。
- 役割: 介護保険の申請代行、ケアプラン(計画書)の作成、医師・看護師・ヘルパー・リハビリなど多職種の連絡調整を行います。
- 選び方:
- 医療知識: 医療依存度が高い(病気が重い)場合は、元看護師など医療職出身のケアマネジャーであったり、重傷者のケアプランの経験が多いと安心です。
- フットワーク: 困った時にすぐ動いてくれるか、連絡がつきやすいかが重要です。
- 情報通: 地域の「良いお医者さん」「評判の良いヘルパー事業所」をよく知っている人を選びましょう。
- ※変更可能: 相性が合わない場合、ケアマネジャーは途中で変更することができます。遠慮なく地域包括支援センター等に相談して大丈夫です。
まとめ:失敗しないための心構え
在宅医療を成功させるための最大のコツは、**「最初の面談で、希望と不安をすべて伝えること」**です。
- 「最期は家で過ごしたいのか、痛くなったら入院したいのか」とか
- 「家族が介護できる時間帯はいつか」とか
- 「絶対にされたくない処置は何か」とか
これらを医師やケアマネジャーに明確に伝えておくことで、ご本人やご家族にぴったりのチームを作ることができます。
ここまでの議論を、在宅医療の「価値」「コスト」「導入」という3つの視点からQ&A形式でまとめました。
在宅医療と言っても、様々なパターンがあります。医師看護師の訪問回数も月に1度程度から、有症時や看取りの時期には毎日訪問になったり、家に少しでも長くいられるように希望はするものの最後は病院や施設に行く場合や、ヘルパーやデイサービス、ショートステイの組み合わせ、など介護保険と医療保険を使って、家で良い時間を過ごすことが第一の目的であったりします。目的パターンによって値段も様々ですが、家にいる時間に価値を見出す人にとっては好い選択肢です。施設も以外にお金がかかります。そこで、在宅医療は選択肢が多くあることや様々なパターンがあること、料金も入院、施設と比較して安い場合が多く、何より本人や家族の満足度が高いことを論じてください。
「在宅医療=自宅で死ぬこと(看取り)」と固定的に捉えるのではなく、**「住み慣れた場所で、その人らしく『生きる時間』を支える選択肢」**と捉え直すことで、この制度の真の価値が見えてきます。
在宅医療は「オーダーメイドの柔軟性」「費用対効果」、そして何より「圧倒的な満足度」という点で、病院や施設にはない独自の強みを持っています。ご指摘のポイントを整理し、その優位性を論じます。
1. 選択肢の多様性と「オーダーメイド」の柔軟性
在宅医療の最大の利点は、患者さんの病状や家族の事情に合わせて、医療と介護のパーツを自由に組み合わせられる「柔軟性」にあります。
- 病状に応じたフェーズ管理:
- 安定期: 月1〜2回の医師の訪問と、定期的な訪問看護で健康管理を行う。「見守り」に近い形です。
- 急性増悪・看取り期: 頻回訪問や24時間対応に切り替え、病院に近い医療を提供します。
- ハイブリッドな出口戦略: 「限界まで家で過ごし、最期だけは病院や施設」という選択も正解です。在宅医療は「家から一歩も出てはいけない」という拘束ではなく、**「ギリギリまで日常を守るためのインフラ」**です。
- 介護保険との自在な組み合わせ: 医療保険(訪問診療・訪問看護)だけでなく、介護保険(ヘルパー、デイサービス、ショートステイ、訪問入浴など)を組み合わせることで、家族のレスパイト(休息)を確保しながら療養生活を継続できます。これらはパッケージ化された施設サービスとは異なり、必要なものだけを選ぶことができるため、無駄がありません。
2. コストパフォーマンス:入院・施設との比較
「家はお金がかかるのではないか」と懸念されることが多いですが、制度をうまく活用すれば、実は経済的合理性が高い選択肢となり得ます。
- 高額療養費制度による上限: 医療保険には自己負担限度額(高額療養費制度)があります。たとえ毎日訪問診療を受け、高カロリー輸液や酸素療法などの濃厚な医療処置を行ったとしても、月額の医療費負担には上限(一般的な所得の70歳以上であれば数万円程度など)が設けられています。
- 「居住費・管理費」の概念がない: 有料老人ホームやサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)では、家賃、管理費、食費といった固定費だけで月15〜30万円以上かかることが珍しくありません。自宅であれば、これらは生活費の一部であり、新たな「施設利用料」は発生しません。
- 入院との比較: 入院も長期化すれば差額ベッド代や食事代がかさみます。在宅医療は、これら「場所代」をカットし、純粋に「医療とケア」に対価を支払う仕組みであるため、結果的にトータルの出費が抑えられるケースが多くあります。
3. 「時間」の価値と満足度
これが最も数値化しにくく、しかし最も大きな価値です。病院や施設は「管理と治療」の場ですが、自宅は「生活と自由」の場です。
- 五感への刺激と自由: 好きな音楽を聴く、ペットに触れる、窓を開けて季節の風を感じる、家族と同じ食事の匂いを嗅ぐ。こうした「当たり前の日常」は、病院では遮断されてしまいます。認知症の方などは特に、環境の変化がない自宅の方が穏やかに過ごせるケースが多々あります。
- 家族にとっても「納得感」のある時間: 「最期まで何もしてあげられなかった」という後悔は、面会制限のある病院でよく聞かれます。一方、在宅では「お気に入りのプリンを食べさせてあげられた」「手を握って昔話ができた」といった小さな成功体験の積み重ねが、遺される家族のグリーフケア(悲嘆の癒やし)に繋がります。
- 「患者」ではなく「生活者」として: 病院ではパジャマを着た「患者」ですが、家ではその家の主であり、親であり、祖父母です。役割や尊厳を保ったまま過ごす時間は、人生の締めくくりにおいて何にも代えがたい価値があります。
結論:在宅医療は「より良く生きるための投資」
在宅医療は、単なる「病院の代わり」ではありません。それは、限られた時間を病院のルールではなく、本人のルールで使い切るための積極的な選択です。
必ずしも「家で看取ること」がゴールではありません。「昨日まで家で笑って過ごせた」という事実があれば、最期の数日を病院で過ごしたとしても、在宅医療の目的は十分に達成されています。
この多様なパターンと、費用対効果、そして何より「生きている時間の質」を高める手段として、在宅医療は今後ますます、賢い選択肢として認識されていくべきだと考えます。
在宅医療の「柔軟性」と「費用対効果」を具体的にイメージしていただくために、代表的な3つのモデルケース(パターン)でシミュレーションを行いました。
いずれのケースも、**「高額療養費制度(医療費の上限)」と「介護保険の区分支給限度額」**を組み合わせることで、施設入居に比べて経済的負担を抑えつつ、高い満足度を得られる設計になっています。
ケース1:【老老介護】「頑張りすぎない」維持期モデル
状況: 80代男性(認知症・軽度要介護)、80代妻(主介護者)。 ニーズ: 妻の介護疲れを防ぎ、共倒れせずに自宅生活を続けたい。
- サービスの組み合わせ(戦略:レスパイトの活用)
- 医療(月2回): 医師が訪問し、慢性疾患と認知症の進行を管理。
- 介護(週3〜4回): デイサービスを主力にします。夫が日中外出することで、妻は「自分の時間」を持てます。
- 切り札: 妻が疲れた時や冠婚葬祭時は、迷わずショートステイ(短期入所)を利用し、数日間完全にケアから離れます。
- ここが「お得」で「満足」:
- 有料老人ホーム(月20〜30万円)に入居するより、自宅(持ち家なら住居費0円)でデイサービスをフル活用する方が、月々の支出は圧倒的に安く済みます。
- 認知症の方は環境変化に弱いため、施設に入ると急激に進むことがありますが、夜は自宅で妻と過ごすことで精神的な安定が保たれます。
ケース2:【独居】「見守り重視」の自立支援モデル
状況: 70代女性(心不全・独居)。 ニーズ: 一人暮らしの不安を解消しつつ、自由気ままに暮らしたい。
- サービスの組み合わせ(戦略:看護師とICTの活用)
- 医療(週1〜2回): 訪問看護師がキーマンです。服薬管理(カレンダーのセット)と、心不全の兆候(むくみやバイタル)をチェックします。
- 介護(週2回): ヘルパーが掃除や買い物を支援。
- 安心材料: 24時間対応の訪問看護ステーションと契約。夜中でも「息苦しい」と思ったら電話で相談でき、必要なら緊急訪問してくれます。
- ここが「お得」で「満足」:
- 施設のような集団生活(決まった時間の食事、レクリエーション)が苦手な方にとって、自宅での独居は「最高の自由」です。
- コスト面では、家賃の低い公営住宅などに住んでいれば、医療・介護費を足しても年金の範囲内で収まるケースが多く、経済的な破綻を防ぎやすいモデルです。
ケース3:【がん末期】最期は家で過ごす「看取り」モデル
状況: 60代男性(末期がん)。病院での治療を終え、退院。 ニーズ: 痛みを取り除き、好きなものを食べ、家族と過ごしたい。
- サービスの組み合わせ(戦略:病院並みの医療を自宅で)
- 医療(毎日〜週3回): 訪問診療医と訪問看護師が頻回に訪問。疼痛管理(麻薬の持続点滴など)や酸素吸入を管理します。
- 介護(適宜): 訪問入浴(移動入浴車)を利用し、お風呂でリラックスする時間を作ります。福祉用具(電動ベッド、床ずれ防止マット)を導入。
- ここが「お得」で「満足」:
- 費用の逆転現象: 医療行為が濃厚になると医療費総額は高くなりますが、**「高額療養費制度」**により、患者さんの自己負担額には上限(一般所得で月額57,600円など※多数回該当等は除く)があります。
- 病院の個室代(差額ベッド代)は1日1〜2万円かかることもザラですが、自宅ならタダです。結果的に、最期の1ヶ月を病院の個室で過ごすより、自宅で濃厚な医療を受ける方が安くなることが多々あります。
- 何より「タバコを一服」「孫と同じ布団で寝る」「ビールを一口」といった、病院では絶対に許されないQOL(生活の質)が確保されます。
まとめ:コストと価値の比較
| 病院・施設 | 在宅医療 | |
| 場所代 | 室料差額、施設管理費などが高額になる場合あり | 自宅(家賃・ローンのみ)。新たな「場所代」なし |
| 医療・介護費 | 保険適用(上限あり) | 保険適用(上限あり)+自分で選べる |
| 柔軟性 | 施設のルール・時間割に従う | 自分の体調・家族の都合に合わせて増減可能 |
| 満足の源泉 | 「安心・安全」が優先 | 「自由・自分らしさ」が優先 |
このように、在宅医療は「病院に行けないから仕方なく選ぶもの」ではなく、**「コストを抑えつつ、最大限の自由を手に入れるための賢い戦略」**と言えます。
特に、「状態が悪くなったら毎日来てもらい、落ち着いたら減らす」という調整が、電話一本でケアマネジャーや医師と相談して即座に変更できるスピード感も、在宅ならではの強みです。
在宅医療の導入は、**「病院という管理された空間」から「日常という自由な空間」への着陸(ランディング)**のプロセスです。この着陸がスムーズに行くかどうかで、その後の療養生活の質が大きく変わります。
一般的な導入の流れと、それを成功させるための「依頼のツボ(連携のポイント)」について解説します。
1. 在宅医療導入の標準的なフロー(タイムライン)
病院に入院している患者さんが、在宅医療を開始して家に帰るまでの典型的な流れは以下の通りです。
STEP 1:意思決定と相談(退院の1ヶ月〜2週間前)
- きっかけ: 主治医から「これ以上の治療は難しい」「病状が安定した」と告げられる、または本人・家族が「家に帰りたい」と希望する。
- 窓口: 病院にある**「地域医療連携室」や「退院支援相談窓口」です。ここにいるMSW(医療ソーシャルワーカー)**や退院調整看護師がキーマンとなります。
STEP 2:受け入れ先(在宅医・訪問看護)の選定(退院の2週間〜1週間前)
- マッチング: MSWが患者の住所、病状(医療処置の有無)、家族構成などを考慮し、対応可能な在宅療養支援診療所(在宅医)や訪問看護ステーションをリストアップし、家族に提案します。
- 依頼: 家族が診療所を選定すると、病院から診療所へ**「診療情報提供書(紹介状)」と「看護サマリー」**が送られます。
STEP 3:退院時カンファレンス(退院の1週間〜数日前) 【最重要イベント】
- 顔合わせ: 在宅医、訪問看護師、ケアマネジャーなどが病院に出向き、病院の主治医、看護師、そして本人・家族と一堂に会します。
- すり合わせ:
- 現在の医療処置の手順(点滴、酸素、吸引など)の確認。
- 「急変時にどうするか(救急搬送するのか、家で看るのか)」の意思確認。
- 退院当日の動きの確認。
- ご本人・ご家族の希望(ACP)
STEP 4:退院・初回訪問(当日)
- 午前中に退院し、自宅へ戻ります。
- 午後、在宅医や訪問看護師が自宅を訪問し、診察と契約、薬のセット、医療機器の動作確認を行います。ここから在宅医療がスタートします。
2. 「スムーズな導入」を実現する3つの鍵
単に手続きを進めるだけでなく、満足度の高いスタートを切るためには、以下のポイントが重要です。
① 「見えない情報」の共有
紹介状に書かれた検査データ(HbA1cやCT画像など)は当然ですが、本当に重要なのは**「生活のデータ」**です。
- 「お父さんは、痛いと言葉に出さずに不機嫌になる」
- 「お母さんは、夜のトイレが一番の不安材料」
- 「介護する長女は、仕事があるため電話に出られるのは17時以降」 こうしたソフトな情報を、退院時カンファレンスでしっかり共有できると、初日からトラブルなく過ごせます。
② 環境調整(ハード面の準備)
医療機器や介護用品の手配は、病院と在宅チームの連携力が問われます。
- 介護用ベッド: 退院前に必ず搬入しておく。
- 在宅酸素: 病院で使っている業者と在宅用の業者の調整。
- 点滴・薬剤: 退院当日に持って帰る薬と、在宅医が処方する薬の切れ目がないようにする。 これらが「家に帰ったら全部揃っていた」状態を作るのがプロの仕事です。
③ 家族への「予行演習」
退院してから家族がパニックにならないよう、病院にいる間に手技を指導してもらいます。
- 「痰の吸引」や「胃ろうの注入」など、家族が行う必要があるケアは、入院中に看護師指導のもとで練習しておきます。
- 「これくらいできれば合格」というラインを、在宅医があらかじめ伝えておく(完璧を求めない)ことも重要です。
ここまでの議論を、在宅医療の「価値」「コスト」「導入」という3つの視点からQ&A形式でまとめました。
Q1. 在宅医療の最大の目的と価値は何ですか?
A. 「看取り」だけでなく、住み慣れた場所で「自分らしく生きる時間」を支えることです。 在宅医療は、単に病院の代わりをする場所ではありません。病院のような管理された環境ではなく、自分自身のルールで生活できる「自由」こそが最大の価値です。
- 柔軟性: 病状が安定している時は「見守り」を中心に、最期の時期は「濃厚な医療」にと、フェーズに合わせて関わり方を柔軟に変えられます。
- 満足度: 好きな食事、趣味、家族との団欒など、病院では得られない「日常の喜び」が、本人と家族のQOL(生活の質)を高めます。
Q2. 施設や入院と比べて、費用は高くなりませんか?
A. 制度をうまく活用すれば、むしろ安く抑えられるケースが多いです。
- 「場所代」がかからない: 施設のような「管理費・家賃」や、病院の「差額ベッド代」が発生しません(自宅の光熱費等は除く)。
- 高額療養費制度: 医療費が高額になっても、所得に応じた自己負担限度額(上限)があるため、支払いは一定額でストップします。
- 必要な分だけ購入: パッケージ化された施設サービスとは異なり、訪問診療やヘルパーなど必要なサービスだけを組み合わせるため、無駄なコストを省けます。
- ほとんどの施設では、病状悪化時や看取りは行わず、入院になることが多いのです。
Q3. 具体的にどのような組み合わせ(パターン)がありますか?
A. 患者さんの状況に合わせてオーダーメイドで設計します。 代表的な3つのモデルケースを挙げました。
- 【老老介護】無理せず続けるモデル: 月2回の診療に加え、デイサービスやショートステイを多用し、介護者の休息(レスパイト)を確保して共倒れを防ぎます。
- 【独居】見守り重視モデル: 訪問看護師による定期チェックと24時間連絡体制、ICT(見守り機器)などを組み合わせ、一人暮らしの不安を解消します。
- 【看取り】最期まで家で過ごすモデル: 頻回の訪問診療と訪問看護、ポータブルトイレや電動ベッドなどの福祉用具を導入し、病院並みの緩和ケアを自宅で提供します。
Q4. 在宅医療を始めるには、どのような手順が必要ですか?
A. 病院の「地域医療連携室」などを窓口に、退院の約1ヶ月前から準備を始めます。
- 相談・選定: 病院のソーシャルワーカー(MSW)を通じて、在宅医や訪問看護ステーションを選びます。
- 退院時カンファレンス(最重要): 病院スタッフ、在宅医、ケアマネジャー、家族が一堂に会し、医療処置や緊急時の対応、生活の注意点をすり合わせます。
- 環境整備: 介護ベッドの搬入や、家族へのケア指導(吸引など)を退院前に行います。
- 開始: 退院当日に在宅医らが訪問し、スムーズに在宅療養へ移行します。